
顧客の一覧、受注の記録、在庫の管理。多くの会社で、こうした情報は表計算ソフトで管理されています。手軽に始められて費用もかからず、必要に応じて自由に項目を足せる点は、大きな利点です。
一方で、扱う件数が増えたり、関わる人が増えたりすると、だんだん扱いにくくなってくるのも事実です。この記事では、その「限界のサイン」と、気づいたときにどう進めればよいかを整理します。
表計算ソフトの良いところ
まず前提として、表計算ソフトは優れた道具です。導入の手間がなく、担当者が自分の判断で項目を追加でき、印刷や集計もその場でできます。件数がそれほど多くなく、扱う人が限られているうちは、これ以上に手軽な方法はなかなかありません。
ですから「表計算ソフトで管理しているのは遅れている」という話ではありません。問題になるのは、業務の規模が道具の得意な範囲を超えたときです。
限界が近づいているときのサイン
1. 複数人で同時に開けない
一番わかりやすいのがこれです。誰かがファイルを開いていると、ほかの人は編集できません。「閉じてもらえますか」というやり取りが日常的に発生しているようなら、そろそろ別の方法を考える時期かもしれません。
共有の仕組みを使えば同時編集も可能ですが、同じ行を別々の人が書き換えてしまうといった問題は残ります。
2. 同じ情報を何度も入力している
受注のファイルに入力した内容を、請求のファイルにも手で書き写している。顧客名を複数のファイルにそれぞれ登録している。こうした状態は、手間が増えるだけでなく、書き写しの間違いが起きる原因にもなります。
情報を一か所に集めて、必要な場所から呼び出せるようにするのは、システム化でもっとも効果が出やすい部分です。
3. どれが最新のファイルかわからない
「顧客一覧_最新.xlsx」「顧客一覧_最新_修正版.xlsx」といったファイルが並んでいる状態です。誰かが自分用に複製したものが残っていたり、メールでやり取りするうちに枝分かれしたりして起こります。
古いファイルを見て仕事を進めてしまうと、取り違えにつながります。
4. 集計や報告書の作成に時間がかかる
月末に半日かけて集計している、担当者ごとに書式が違うので手作業でそろえている、といった状況です。集計の作業自体は、条件さえ決まっていればコンピューターが得意とする部分です。
5. 作った人しか触れない
計算式が複雑に組まれていて、担当者以外は中身がわからない。その方が異動や退職をすると、誰も手を入れられなくなってしまいます。特定の人しか扱えない状態は、業務が止まるおそれのある状態でもあります。
6. ファイルが重くて開くのに時間がかかる
行数が数万件を超えたり、計算式が増えたりすると、開くだけで待たされるようになります。作業のたびに数十秒待つのであれば、その積み重ねは無視できない時間になります。
気づいたら、すぐにシステム化すべきでしょうか
上のようなサインが出ていても、必ずしもすぐに開発が必要とは限りません。まずは次の点を確認してみてください。
ひとつは、ファイルの整理です。使っていない列や過去の年度の情報を分けるだけで、動作が軽くなり、見通しがよくなることがあります。
また、入力の決まりを社内でそろえるだけでも、状況が改善する場合があります。日付の書き方がばらばらだったり、同じ会社名が複数の表記で登録されていたりすると、集計や検索がうまくいきません。入力する形をあらかじめ決めて共有しておくことは、将来システムへ移す際にもそのまま役立ちます。
もうひとつは、既製のサービスで足りるかどうかの確認です。顧客管理や在庫管理といった一般的な業務は、月額料金で使えるサービスが多く提供されています。まずはそちらで試してみて、どうしても合わない部分が出てきてから開発を検討する、という順番も選べます。
段階を踏んで進める
一度にすべてを置き換えようとすると、費用も社内の負担も大きくなります。困っている部分から順に、少しずつ移していくほうが、現場も無理なく慣れていけます。
たとえば、まず顧客の情報だけを一か所にまとめる。次に、受注の記録をそこにつなげる。というように分けて進めれば、それぞれの段階で効果を確かめながら判断できます。
まとめ
表計算ソフトでの管理が難しくなってきたサインとして、次の6点を挙げました。
- 複数人で同時に開けない
- 同じ情報を何度も入力している
- どれが最新のファイルかわからない
- 集計や報告書の作成に時間がかかる
- 作った人しか触れない
- ファイルが重い
いくつか当てはまるようであれば、一度、現在の作業の手順を書き出してみることをおすすめします。書き出す作業そのものが問題点の整理になりますし、その内容は、あとで相談する際の資料としてもそのまま使えます。
