
業務システムを導入する際、多くの関心は「いくらで作れるか」「いつから使えるか」に向きます。しかし実際には、使い始めてからのほうが期間としては長く、その間ずっと動かし続けるための手当てが必要になります。
見積書に「保守費用」という項目があっても、何に対する費用なのかがわかりにくいという声をよく聞きます。この記事では、保守の中身を整理してご紹介します。
保守では何をしているのか
保守と呼ばれる作業は、大きく次の3つに分けられます。
1. 不具合への対応
使っているうちに、想定していなかった動きが見つかることがあります。特定の条件のときだけ計算が合わない、ある文字を入力すると登録できない、といったものです。
こうした不具合は、どれだけ丁寧に確認しても、完全になくすことは難しいものです。実際の業務では、開発中には想定しなかった使い方や、珍しい形の情報が入ってくるためです。見つかったときにすぐ直せる体制があることが、業務を止めないための備えになります。
2. 動かす環境を保つための更新
これが、外から見えにくいわりに重要な部分です。
システムは、それ単体で動いているわけではありません。土台となるいくつかの基本的な仕組みの上で動いており、それらは安全性を保つために定期的に更新されます。更新されると、古い書き方の部分が動かなくなることがあるため、こちらも合わせて手を入れる必要があります。
放置していると、ある日突然エラーが表示されて使えなくなる、といったことが起こり得ます。また、更新されていない状態は、外部からの不正な侵入を受けやすくなる原因にもなります。
このほか、パソコンやスマートフォンの画面表示の仕組みが新しくなることで、表示が崩れるといった影響が出る場合もあります。
3. 機能の追加や改善
使い始めると、「この項目も入力できるようにしたい」「集計の条件を変えたい」といった要望が出てきます。法律や制度が変わって、書式の変更が必要になることもあります。
こうした変更は、当初の開発の範囲外になるため、保守契約の中で対応する場合と、そのつど別に見積もる場合があります。どちらの扱いになるかは契約によって異なりますので、確認しておくとよい点です。
保守費用はどう決まるのか
保守費用は、対応する範囲と、どれくらいの速さで対応するかによって変わります。
たとえば、「不具合が起きたときの対応のみ」という契約と、「月に数時間までの変更作業を含む」という契約では、当然費用が異なります。また、「平日の営業時間内に対応」と「トラブル時は時間を問わず対応」でも変わってきます。
一般的には、開発にかかった費用の一定割合を年間の保守費用とする考え方が用いられることが多いですが、システムの規模や求める対応の速さによって幅があります。
契約前に確認しておきたい点
保守について話を詰める際は、次の点をあらかじめ確認しておくと、後の食い違いを防げます。
- どこまでが保守の範囲で、どこからが別途の費用になるのか
- 連絡してから対応が始まるまでの目安の時間
- 対応してもらえる時間帯(平日のみか、休日も含むか)
- 定期的に行う作業があるか、その報告はあるか
- データの控えを取る仕組みがあるか、元に戻す作業は費用に含まれるか
- 契約の期間と、更新のときに費用が変わる可能性
特に最後のデータの控えについては、確認をおすすめします。誤って情報を消してしまったとき、機器に不具合が起きたときに、どこまで戻せるのかは、業務への影響が大きい部分です。
保守を付けない場合に起こりやすいこと
費用を抑えるために保守契約を結ばない、という判断もあり得ます。ただし、その場合に起こりやすいことも知っておく必要があります。
まず、トラブルが起きたときの対応が後回しになりがちです。契約がない状態では、依頼を受けてから内容を確認し、見積もりを出し、了承を得てから作業という流れになるため、復旧までに時間がかかります。
また、長く手を入れていないシステムは、いざ修正しようとすると、環境の更新も含めてまとめて対応することになり、結果的に費用がかさむ場合があります。日ごろから少しずつ手を入れておくほうが、総額としては抑えられることが多いものです。
まとめ
業務システムの保守には、不具合への対応、動かす環境を保つための更新、機能の追加や改善という3つの役割があります。いずれも表からは見えにくい作業ですが、システムを安心して使い続けるためには欠かせない部分です。
導入を検討する際は、開発時の費用だけでなく、その後の維持にかかる費用も含めて全体を見ておくことをおすすめします。何年使うつもりなのかを想定したうえで総額を確認しておくと、判断がしやすくなります。
