
生成AIを使ってみたものの、「思っていたものと違う答えが返ってきた」という経験はないでしょうか。多くの場合、原因はAIの性能ではなく、指示の伝え方にあります。
この記事では、欲しい答えに近づけるための指示の出し方を整理します。
あいまいな指示だと、結果がぶれます
「お知らせの文章を書いて」とだけ伝えると、誰に向けたものか、どのくらいの長さか、どんな調子かがわかりません。生成AIはその空白を自分で埋めてしまうため、意図と離れた文章が返ってきます。
これは新入社員に「あの件、まとめといて」と頼むのと同じ状況です。相手が優秀でも、前提を知らなければ的外れな成果物になります。
伝えるべき4つの要素
指示に次の4つを入れるだけで、精度は大きく変わります。
1. 目的:何のための文章か →「新サービスの開始をお客様に知らせるため」
2. 読み手:誰が読むのか →「これまでご利用いただいた法人のお客様」
3. 分量と形式:どのくらいの長さで、どんな形か →「400字程度のメール文面。件名も含めて」
4. 内容:必ず盛り込む要素 →「9月1日開始」「既存のお客様は手続き不要」
これらを並べて渡すだけで、返ってくる文章は実用に近いものになります。
悪い例と良い例
悪い例
会社紹介の文章を書いて
良い例
ホームページに載せる会社紹介文を書いてください。 ・読み手:これから相談を検討している中小企業の経営者 ・分量:300字程度 ・含める内容:創業20年、地域密着、相談から納品まで同じ担当者が対応 ・調子:落ち着いた、ですます調 ・避けたい表現:大げさな言い回し
後者は手間がかかるように見えますが、書き直しの回数が減るため、結果として早く仕上がります。
例文を添えると精度が上がります
言葉で説明しにくい「雰囲気」は、実例を見せるのが確実です。
過去に作った案内文や、社内で評判のよかったメール文面を添えて、「この調子に近づけてください」と伝えてみてください。文章の長さ、丁寧さの度合い、専門用語の使い方などが、説明するより正確に伝わります。
逆に「こういう文章は避けたい」という例を示すのも有効です。
役割を伝えると、答えの方向が定まります
「あなたは中小企業向けに文章を書く広報担当者です」のように、立場を先に伝える方法もあります。
同じ内容でも、誰の視点で書くかによって文章は変わります。経理担当者の視点なら費用面に触れますし、営業担当者の視点ならお客様への伝わりやすさを重視します。求めたい方向がはっきりしている場合は、最初に伝えておくと近道になります。
また、「専門用語を使わず、初めて聞く人にもわかるように」といった条件を添えるのも効果があります。読み手の知識をどの程度と見込むかは、文章の書き方を大きく左右する要素です。
一度で完成させようとしない
指示を工夫しても、一度目で満足のいく答えが出るとは限りません。むしろ、やり取りを重ねて近づけていくのが本来の使い方です。
返ってきた文章に対して、次のように具体的に伝えます。
- 「2段落目をもう少し短くしてください」
- 「専門用語を減らして、初めて読む人にも伝わる表現に直してください」
- 「もう少し落ち着いた調子でお願いします」
「なんとなく違う」ではなく、どこをどう変えたいかを言葉にすることが要点です。この直し方は、人に修正を依頼するときと同じ考え方です。
うまくいかないときの見直し方
何度やり取りしても求める答えに近づかない場合は、次の点を疑ってみてください。
一度に多くを求めていないか。 「調査して、まとめて、案内文にして」と一度に頼むと、それぞれが中途半端になります。段階を分けて、一つずつ進める方が確実です。
前提が伝わっていないか。 業種や取扱商品、お客様の層といった前提は、こちらにとって当たり前でも相手は知りません。最初に短く説明しておくと、以降のやり取りが噛み合います。
やり取りが長くなりすぎていないか。 会話が長く続くと、途中の指示が薄れて反映されにくくなることがあります。方向が定まらないと感じたら、これまでの要点を整理して新しく始め直す方が早く進みます。
使い回せる指示は残しておく
うまくいった指示文は、メモに残しておくと次から使い回せます。会社名や日付だけ書き換えれば、同じ品質の下書きが得られます。
社内で共有すれば、生成AIを使い慣れていない社員も同じ結果を出せるようになります。個人の工夫を社内の財産にしていく、地道ですが効果の大きい取り組みです。
完成度を求めすぎないという考え方
指示の出し方を工夫しても、生成AIの文章がそのまま使える形になることは多くありません。8割ほどの状態まで持っていければ十分、と考えておくと気持ちが楽になります。
残りの2割、つまり自社ならではの表現や、お客様との関係を踏まえた言い回しは、人が手を入れる部分です。むしろ、そこにこそ書き手の価値があります。
生成AIは、時間のかかる下準備を引き受けてくれる存在です。空いた時間を、中身を考えることに使う。この配分ができれば、日々の仕事は着実に変わっていきます。
まとめ
生成AIへの指示は、目的・読み手・分量・内容を具体的に伝えることが基本です。そのうえで例文を添え、やり取りを重ねて仕上げていく。うまくいった指示を残しておけば、次からの作業はさらに短くなります。
